緑子の話 3
バタバタと家の廊下を走る音に緑子は目を覚ました。 寅吉が帰るまでにと緑子は読書をしていたのだが、いつの間にかうたた寝をしてしまっていたようだ。 それからほどなく緑子の部屋のドアをたたく音がした。 何事かと緑子はドアを開けた。 『奥様、電報でございます!」と家政婦のウタが緑子に電報を差し出した。 緑... 続きをみる
緑子の話 2
父が緑子の前でテーブルに並べた写真は、いずれも緑子のために選んだ結婚相手だった。 その中には華族出身、エリート軍人、財閥の御曹司たちもいたが、その中の半分は書生の男性の写真も含まれていた。 緑子が選んだ男性の3人はいずれも書生だった。 結局、その中で緑子は2人に絞り迷いに迷った挙句、隣町の藤田先生... 続きをみる
緑子の話 1
とうとう母は、秘密の話を墓場までもっていってしまった。 けれど、一部の母の想いは私が知っている。 現代のこの時代は、情報が氾濫している。 本当の秘密なんて、存在しないに等しいのかもしれない。 まして、昔の話など。 これから登場する人物たちは、もうこの世には誰一人としていない。 この物語を知っている... 続きをみる
見慣れた街
『ご予約は?』という受付の人に、 私は、「いいえ、予約していません。」と応えた。 街中の真新しいクリニックは、友人が教えてくれた所だった。 今回で2回目、急な腹痛にも対応してくれるらしいと友人が教えてくれた。 その時は、聞いていてもメモするだけだった。 でも、本当に急な痛みに悩まされて通院を決意し... 続きをみる
太古の婚活
太古の婚活といえども、単純なものとは限らないというお話です。 大昔は、父親の地位で子供たちの地位が決まってしまうというのは、過言ではありませんでした。 例えば平安時代ならば、同じ貴族だといっても父親の地位でかなり境遇が違ったのでした。 しかも代々天皇にお仕えする身分だった、いわゆる「名門」であって... 続きをみる
教えてはいけない⁈
婚活と一言でいっても、その中身は決して良いことばかり、悪いことばかりだけということはありません。 一般にいわれている40代後半の女性の成婚率は残念ながら10%~20%の確率しかありません。 そんな中、このわずかな確率の中で、婚活を卒業(成婚)された人がいます。 今回は、この女性の場合をフォーカスす... 続きをみる
俺流の婚活
その男性はいつも遅刻してきました。 最初の1回目は仕方ないと思っていました。 他府県からの彼にとっては、迷っても仕方ないと思いましたから・・・。 でも、それにしても連絡がないというのはどうなんだろうかとも・・・? 2回目に来たときも、また遅刻でした。 前回と同じ場所でのパーティーでしたから、今度は... 続きをみる
仮名の女 2
婚活パーティーが始まる一カ月以上前から、仮名の女性はいつパーティーが開催されるのかと尋ねてきた。 そのパーティーに参加したいという友人も誘っていいのかという質問に、私は快くOKだといった。 それから数日後のある土曜日のこと。 仮名の女性が住む近所の主婦グループたちと、私の近くまでくると連絡してきた... 続きをみる
身売りの女
これは私が失敗した話です。 婚活パーティーを外部の人にも公開することにしてから、2回目の企画をしたときのことです。 某市では一流ホテルといわれたところに婚活パーティーの予約をいれたのですが、なんとその期日はホテルのブライダルの企画と重なっており予約したレストランが使用できないという連絡がきました。... 続きをみる
追っ手
『ねえ、ちょっと話があるんだけれど・・・、一度行ってみたいんだよね。噂の婚活パーティーに行きたいんだ、私。』 友人のY子に呼び出されたきたら、とたんにそんなことを彼女が言い出した。 「噂の婚活パーティー?それって、遠方だし駅までスタッフが見送るとかいうあのパーティーに・・・? あなたは変わっている... 続きをみる
仮名の女 1
うっすらと晴れた曇りの日、 私は未亡人だという女性と歩いていた。 なにげない会話は、まだお互いに知らないところがあるように身の上話をしあっていた。 突然、彼女が足を止めた。 人通りの少ない路地に入ったばかりだったので、何事かと思い彼女を見ると瞬時に拾った品のいい大きなショールを手慣れた手つきで取り... 続きをみる
忖度と無情の女
ある日の午後。 【私!どうしても結婚したいんです!】 という女性がいるのだけれど、どうしたらいいのだろうと、私は友人から相談をうけた。 「だったら、簡単なことじゃないの?その女性の近くの結婚相談所に行ってもらえばいいんじゃない?」 私は友人にそう応えていた。 本来なら、「私が担当してもいいよ」とい... 続きをみる
名門の女
ある日の午後、 その女性をしばらくぶりに見た。 門構えの屋敷の門が少し開いていた。 交差点での信号待ちは、その屋敷まで続いていた。 私は、その屋敷の前で止まりたくはなかったが、信号待ちだから仕方ないとあきらめていた。 穏やかな春の日差しの中で、明るく会話を交わす中年の男女は幸せそうだった。 その傍... 続きをみる
暗闇のバンパイア
その男性はいつも静かだった。 時々、独身限定の集会にやってはくるだけだった。 婚活をしているという彼だが、不思議なことにどこの結婚相談所も所属しているとは聞かなかった。 彼曰く、「数年前に結婚相談所に入ったんですけれど、あんまりうまくいかなかたった・・・。」 そういって、彼はいつも視線を上にした。... 続きをみる
心友
ある婚活パーティー。 その頃の私は婚活をしていた側だった。 パーティ^-会場に行くと男性は11人いるのに女性は2人だった。 本当は女性は3人のはずがドタキャンしたせいだと主催者側がいう。 当日は台風だから、ほとんどの女性がドタキャンしたらしい。 その頃の私はいえば、何でもいいから行けるパーティーが... 続きをみる
幻の女
たまたま知り合った女性は、年下の女性だった。 一人っ子で、お父様が大好きだったという彼女は、お母様を支えて暮らしているということだった。 私と話している間に友達として付き合うようになり、やがて彼女は自分の親友だという女性も会わせてくれた。 やがて、介護が必要となった彼女のお母様の施設探しを一緒にし... 続きをみる
影を追いかけて!
昨年のある日、友人からメールがきて君が死んでしまったことを知りました。 ここ3、4年前から、しかもたった2回だったけれど、いつも突然に昼過ぎに私に電話してきた君。 「君、なんで私のところにかけてくるの?」との私の問いに、 『だってこの時間に電話をとってくれるのは、あなたしかいないじゃない!』と応え... 続きをみる
勘違いの人
これは私が実際に経験したある人物と私との話です。 「婚活」という言葉があたりまえのように使われだした頃、私はようやく遅い婚活を始めていました。 「理想の男性は?」 「どんな人がいいの?」 すべての質問の答えは「異性(男性)」「人間」という言葉しか思い浮かびませんでした。 それほど婚活を自分がするは... 続きをみる
震える心
お見合いの成立は、相手に会ってお互いが感じがよいと思ったときに成立します。 それからが、本当の「出会い」。 相手に神秘の部分があれば、それは魅力になるけれど「わからない部分」はお見合いにとっては命取りです。 特に一方だけが情報を開示した状態なら、かなり赤信号に近い黄色です。 相手が知りたくても言い... 続きをみる
眠りの中で
昨日は多重人格の人をフォーカスしたテレビ番組があった。 つまり、前回の続編。 病気と診断されるほどの障害がなくても、ある程度はそれに似たことを知らずに体験している人がいるような気が、テレビ番組を見て思った。 三歳、七歳、十代の少年少女、いろんな人が一人の人間から独立している感情が交代に代わる代わる... 続きをみる
節分の豆
府立病院での再検査の日・・・。 そう思っていたのに・・・、日時が延びました。 また、不安な日々が続きます。 診療所のかかりつけの医師は、私が手術する日を検討してくださっているみたいです。 でも・・・、ほぼ間違いないけれど、まだ確定したくありません。 結構な年齢になっても、まだ生きることに執着がある... 続きをみる