今から15年前になるだろうか?
私と母はデパ地下で買い物に行っていた。
あの時何故か私は幸せだと思っていた。
久しぶりのショッピングがそう思えたのだろうか?今となってはわからない。
買い物が終わって、すき焼きを食べに行こうという頃には、店の中はお客さんでいっぱいだった。
整理券が渡されていたせいか、店の前はまばらであった。
当時40歳過ぎの男性が店の前で座っていた。
お店の人ではないことはすぐにわかったが、お店の奥の一角が空いているのに、その方向では知らぬ顔をして誰かを待っていたようだった。
私は、その男性に近づいて尋ねた。
すると男性は意外な答えを言ったのだった。
「よかったら、待たなくても今すぐ座れますよ。ただ、お願いがあります。協力してくださいますか?」
とにかく何も考えずに私はその男性の尋ねに応えていた。
男性が合図すると店の奥から店員さんが席まで案内していた。
さっきまで、誰もいなかった座席にきれいな女性が座っていた。
母と私は躊躇しながら、店員さんに促されるままに席に座った。
座った途端に、男性が2,3人やってきた。
一人はカメラマン、もう一人は合図をしていたのでディレクターさん?
きれいな女性には見覚えがあった。
アナウンサーの方だ・・・、私はそう思ったがテレビをあまり見ない母は何も知らずに食べながら、その女性と会話しだした。
私はカメラマンが後ろにきた時点で、自分の姿がはっきり映らないように角度を変えていた。
「OKです!」その言葉とともに女性と他の人は片づけを始めた。
「ありがとうございました。」と女性がいわれ、男性の方たちは放映の日時をいってくれた。
あとは、私と母とでゆっくりとした。
帰りはもちろん、支払いは2人分。
別に記念品をもらうこともなかった。
ただ、生まれて初めてテレビに映ったことだけが嬉しかった。
後日、教えてもらったテレビをホームビデオに録画したが、当時はVHSテープ・・・、現在はこのテープは行方不明。
驚いたのは、スタートの題名のついたオープニングのときから、カメラは私たちを映していたのだった。
それって、まだ彼らと接触もしていないときなのに・・・。
不思議な、懐かしいホームビデオと私の話です。