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悲しい思い出30

十数年前、薬の副作用で糖尿病となってしまった母は、あれからずっと気を付ける日々を送った。


しかし、月日が流れ加齢によるものなのかわからなかったが、母の注意が近頃散漫であったのは確かだった。


不注意が死にかけるまでに至ったのは、母の体力が弱まっていたとしか私には思えなかった。


病院の個室に母が落ち着いて、5日ぐらいが経った。
そんなある日のこと、母は珍しく男性看護師の悪口を言った。


私は母の言葉が本当なのかと疑問に思った頃、男性看護師がやってきた。


彼は自分の服のポケットから母に薬を差し出して母に渡していた。


母はそんな彼を無言でにらみつけていた。


彼が去った後、母は私に言った。
「あの人(男性看護師)、なにも見ないで私に薬を渡すけれど大丈夫なのかしら⁉なんであんな人を病院が雇っているんだろう!!」と不満そうに言った。


あと3日、そうすれば退院できる・・・、それまで我慢しようと私は母に言ってしまった。
帰りにナースセンターに行った私は、男性看護師に注意してほしいと頼んだ。


翌日の夕方、珍しく甥が母の病室にやってきた。


私は、甥が代わってくれるというのでいつもより早めに家に帰る支度をして帰った。
母が退院すれば、すぐに休めさせるための準備もするつもりだった。


しかし、この後私は病院の出口からすぐ病室に戻ることになろうとは、この時全く予想もしなかったのだった。