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悲しい思い出21

ルンルン先生はその後、経過を見ながらではあったが母の外出を検査のない日は積極的に許してくれるようになった。


病院食が嫌な母は、毎回焼き肉を食べたがるのであったが、そんな母でも嫌いな牛レバーを摂ることは忘れなかった。
穏やかな日々が続いたある日の午後、ルンルン先生は病室にお別れに来られた。


「次の先生にも外出は積極的にするように言ってありますから・・・。」そういうとルンルン先生は明るく私達に手を振ってくれた。


次の朝、高身長の白衣姿の若い男性が母の前に現れた。
最初に彼が話した言葉は「ご家族は外してください。」だった。


今までの先生たちはそんなことは言わないので、何故そのようなことを言われるのか不思議だった。


次の日、私が母の病室に向かう最中に弟と廊下で出会った。
聞けばやはり、「ご家族は外してください」と男性医師に言われたそうだ。


この男性医師は、看護師さんたちの間では「マダム・キラー」と呼ばれていたそうだ。
私の母も例外なく、キラー先生(長いので)が気に入ったようだった。


キラー先生は、医大では10年に1度の秀才と呼ばれていたそうだ。
そんな感じで、私たち家族とは接触を持ちたがらない医師であった。