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悲しい思い出20

ルンルン先生が病室からいなくなると、私たち親子はしばらく唖然としていた。


その当時の私達にとって、少しばかりの数値の上下は今までにもあったことで、血液の数値が上がるときはわずかであっても、下がるときの降下に問題があるとずっと教えられてきたので、少しばかり数値が上がったらなにがあるのかさえ推測することもなかった。


当の患者である母は、今まで数値が上がってきたときに限って、複数の検査や輸血をしなければならなかった経験から、その日は私に病院に泊まるようにいった。


以前より個室である母の病室には、簡易ベッドが持ち込みができるため当番制で泊まっていたが、この日は父の番であったが私が泊まることになった。


翌朝、ルンルン先生が病室やってきた。
母がその途端に怯え、身体を子供のように震えていた。
ルンルン先生の後ろに死神先生がいたからだった。


死神先生は母に言い聞かすように話し出した。
「○○さん、これから別の検査をしていきます。けれど、怖がらないでください。
これからは、あんなに立て続けの検査はしません。
この病気の経過を知るためにも、あなたの協力が必要です。
更なる入院期間の延長なりますが、よろしくお願いします。」


母の病態が悪化しても、そのままでも転院の話があったので、引き続き同じ病院ならば母の移動の負担はなくなるということだった。


私は、死神先生の話を聞いて少し安心したのだった。