悲しい思い出15
私達の介添えで実家に上がり込んだ母は、叔父夫婦をあとにして祖父母の仏壇へと向かった。
叔母が椅子を用意してくれると、母はどっかりと座り込んだ。
「よくこれたね、何時に帰るの?」
という叔父の言葉を聞いた母は、ホッとした表情となった。
私は、叔父夫婦にお弁当を運んできてもらった礼を言った。
本当は母のために作ってくださったようだが、薬の副作用で食べることができなくなってからも、私のためにと時々作ってもってきてもらっていた。
私達は、病院には夕方までの外出だと告げた。
それならば、もう少しここにいればいいという叔父に母は、姉のところにも行きたいといって実家を後にした。
伯母の家に行くと、玄関から少し入ったところに大きなソファが一つ置かれていた。
伯父が伯母の頼みをきいて、置いてくれたものだった。
「もう、あのまま元気な姿では会えないのかと思っていた・・・。」という伯母に母は涙ぐんでいた。
実家の叔父のところよりは長く居たものの母は、帰り支度を始めた。
いつもならもっと伯母と話し込む母であったが、やはり体力がないらしい。
病院に帰る時刻まで、あと2時間となった車中で母はいきなり言い出した。
「焼き肉を食べに行こう!」
私と弟は思わず母の顔を覗き込んだ。
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