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緑子の話 2

父が緑子の前でテーブルに並べた写真は、いずれも緑子のために選んだ結婚相手だった。


その中には華族出身、エリート軍人、財閥の御曹司たちもいたが、その中の半分は書生の男性の写真も含まれていた。


緑子が選んだ男性の3人はいずれも書生だった。
結局、その中で緑子は2人に絞り迷いに迷った挙句、隣町の藤田先生の書生の多田寅吉とお見合いをすることになった。


お見合いといっても、緑子の父が家に寅吉を招いて食事をするだけだった。


当日、訪問してきた寅吉の身体は緊張のしすぎとでもいうのだろうか?硬かった。
食事会もそこそこに、寅吉は帰っていった。


寅吉が帰ったあと、父は緑子に「純朴なのはいいが・・・、あんなのでいいのか?」と娘の緑子に尋ねた。
緑子の母は、寅吉を一目見た瞬間、挨拶もそこそこに奥に引きこもってしまっていた。


緑子は母が怒ったように奥に行く姿を見送りながら、寅吉なら自分のの思い通りに動いてくれるはずだと思った。


ほどなく結婚した緑子と寅吉は新居に移った。
緑子にとっては、マッチ箱のような小さな家だったが、お嬢様育ちの緑子にとってはそれが珍しくて仕方なかった。


実家からは、2人の家政婦が緑子についてきた。
当然ながら小さな家に、2人の家政婦は小さすぎて住めなかったので、緑子の実家の援助で近くの家を借り、そこから2人の家政婦が通った。


若夫婦よりも大きめの家に、2人の家政婦の家を借りるという変わった光景・・・。
当分は実家からの援助だったが、いずれは経済的にも独立しなければならない。


寅吉にとっては、責任重大というところだろうか。
けれど、名門の出のお嬢様である緑子を嫁にしたことで、嫁の実家の人脈さえ利用できる身分になった寅吉にとっては出世も早かった。


出世と共に生活にも余裕ができ、狭い家からそれなりの大きさの家に移るまでには5年とかからなかった。
家のことは何でも緑子の意見がとおり、寅吉は緑子が欲しいといえばどんなものでも手に入れる努力を絶やすことはなかった。
それと共に寅吉は仕事が多忙となっていった。


寅吉も仕事が徹夜となり朝帰りということはなかったが、夜遅い帰宅は当たり前の生活となっていった。
そんな生活が続く中、緑子は結婚してから10年も経つというのに子供ができないということに悩みだしていた。


ふと、緑子は外をみると激しい風雨にガラス窓が今にも割れんばかりにふぶいていた。
こんな夜なのに、今夜も寅吉は遅くなるのだろう。
緑子は結婚した時から感じた孤独が、頂点となりつつあるのを感じた。


そんな中、玄関の扉を強く叩く音が屋敷内にひびいた。